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今村与志雄訳『唐宋伝奇集(上) 南柯の一夢 他十一篇』

サルでも誤訳とわかる今村与志雄訳『唐宋伝奇集(上)南柯の一夢 他十一篇』(岩波文庫,1988)^_^;

本書巻頭に収録された「白い猿の妖怪」と題された「補江総白猿伝」の訳文の一部(本書11-14頁)を
引いたので([ ]内は引用者)、どこがおかしいのか、よぉーくお考えながら、お読み下さい(^o^)丿

    ・・・[南方遠征軍の別将]欧陽紇[おうようこつ]の妻は肌が白く、あえかな、非常に
    美しい女であった。/その地の部族の人が、不審に思って欧陽紇に忠告した。/「将軍は、
    どうして綺麗なつれてここにお出でになった? 当地には若い女をさらう神がおります。
    特に綺麗な女が必ず狙われますぞ。用心して警備なさったほうがよろしい」/欧陽紇は
    驚愕した。夜間は、護衛を家の周囲に配置して、妻を奥の部屋にかくし、非常に堅固に
    閉めきった上に、女奴隷十余人の見張りをつけて守らせた。/その夜、強い風が吹き
    出して空が真暗になった。五更ごろ[「午前三時~五時」と訳注]、静かになり、なにも
    聞こえなかった。護衛は疲れてうたた寝をした。/突然、なに物かに目を醒まされた
    ような感じがした。すると、妻はもう消えていた。/戸締りはもとのままである。どこから
    出て行ったのか判らなかった。/外へ出ると、山路がけわしく、一寸さきが朦朧として、
    追跡できなかった。夜が明けても、その痕跡は全然見つからなかった。/欧陽紇は激怒し、
    心痛した。おめおめ一人では帰らぬと誓いを立てて、病気を口実にして、麾下の軍を
    同地に駐屯させ、毎日、四方の偏鄙なところへ出かけた。奥深くわけ入り、険阻を越えて
    捜索をつづけた。/数か月たって、ふと、百里はなれたところで小竹のしげみから、
    刺繍のある妻の履物の片方を発見した。雨水に濡れていたんでいたが、それと見分けられた
    のであった。/欧陽紇は悲しみにうちひしがれたけれども、捜索の意志はますます強固に
    なった。屈強な兵士三十人選抜し、武器を持ち、食料を背負って、岩かげに露営し、
    野外で食事をしながら、さらに十日あまり探索をつづけて、駐屯地から約二百里離れた
    ところで、南に山が見えた。ほかの山々より一段高く聳えていた。/山の麓に着くと、
    深い谷川が山を廻って流れていたので、筏をつくって渡った。きりたった岩や青々とした
    竹の間に、しばしば紅い衣裳の影が見え、笑いさざめく声が聞こえた。葛かずらをつかみ、
    太い縄を引いて断崖をよじのぼると、美しい樹木の植え込みの間に珍しい花が咲きそろい、
    その下に、絨毯のように柔らかな緑のしとねがひろがっていた。静かですがすがしく、
    この世と思われぬ不可思議な境地であった。岩窟の東向きの門のところで、数十人の女が
    あざやかな肩掛けと衣裳で、笑い声をあげ、歌いながら、門を出たり入ったりしていた。
    /見知らぬ人影を見て、女たちはみな、しげしげと見つめ、足をとめて待っていた。
    そこに着くと、女たちが訊ねた。/「どうしてここへ来たの?」/欧陽紇が詳しく説明して
    それに答えた。女たちは顔を見合わせて、嘆息した。/「奥様は一月あまり前ここに
    来ましたのよ。いま、加減が悪くて寝ています。人をやって様子を調べさせたほうが
    よろしいわ」/・・・   

おそらく誤訳という先入観ナシで読んでも、変だと気付くと思うんだけど、如何だったかしら(^_^;)

欧陽紇の妻が拉致された「駐屯地」から「妻の履物の片方を発見」するまで「数か月」もかかった上、
「さらに十日あまり」してから「この世と思われぬ不可思議な境地」へ捜索隊が辿り着いたのに対し、
「奥様は一月あまり前ここに来ましたのよ」と言われるなんて、おかしいと思いませんかね(@_@;)

これだと、何者かが欧陽紇の妻を拉致して「駐屯地」から「不可思議な境地」まで運ぶのにかかった
日数は「数か月」+「十日あまり」-「一月あまり」=〈何ヶ月か〉かかったことになっちゃうけど、
誰にも気づかれずに、しかも「戸締りはもとのままである。どこから出て行ったのか判らなかった。」
ぐらいサササッと拉致したほどの化け物が〈何ヶ月か〉かかっちゃうなんて変じゃないかしら(@_@;)

んで、本書の「数か月たって」(12頁)、「さらに十日あまり」(12頁)、「一月あまり前」(14頁)
という3箇所の訳を不審に思った小生は、本棚から2冊の本を取り出してきたわけなのさ( ̄ヘ ̄)y-゚゚゚

岡本綺堂『【怪談コレクション】中国怪奇小説集 新装版』(光文社文庫,2006)所収の「白猿伝」で、
この3箇所をチェックしてみた(^^)

    「数か月たって」⇒「こうしてひと月あまりを経たるのち」(同書153頁)    

    「さらに十日あまり」⇒「十日あまりも」(同書153頁)

    「一月あまり前」⇒「ひと月ほど前から」(同書154頁)

岡本綺堂の訳だと、「ひと月あまり」+「十日あまり」-「ひと月ほど」=〈十日ほど〉となるから、
化け物が欧陽紇の妻を運ぶのにかかった日数としては、捜索隊のスピードよりも速いし、自然な感じが
するよね(⌒~⌒)

駒田信二『中国書人伝』(芸術新聞社,1985)の「欧陽詢」の章に「補江総白猿伝」の前半と結末の訳
が載っていたから、そちらも参照してみたよ(^^)

    「数か月たって」⇒「それから一ヵ月あまりたったとき」(同書64頁)

    「さらに十日あまり」⇒「それから十日あまりたったとき」(同書64頁)

    「一月あまり前」⇒ ※当該箇所の訳は載っていない

岡本綺堂の訳ならば上述の疑問は解消して辻褄も合うし、岡本綺堂の訳&駒田信二の訳と、本書の訳で
完全に食い違っているのは、「数か月たって」(本書12頁)という箇所であることが判った( ̄◇ ̄;)
こうなると、本書の「数か月たって」(本書12頁)という箇所は誤訳の疑いが濃くなるわけです(@_@)

んで、答え合わせをするために図書館から借りて来たのが、竹田晃&黒田真美子(編)成瀬哲生(著)
『中国古典小説選 4 古鏡記・補江総白猿伝・遊仙窟〈唐代 1〉』(明治書院,2005)C= (-。- ) フゥー
この「数か月たって」に該当する部分の「原文」「書き下し文」「現代語訳」を同書64頁から引く(^^)

    原文:既逾月[※「既」と「逾」の間に「レ点」]

    書き下し文:既に月を逾え

    現代語訳:既に一ヶ月を越えた頃

「語注」も「逾月=翌月になる」(64頁)とし、岩波文庫の誤訳確定ヾ(`◇´)ノ彡☆コノ!バカチンガァ!!

念のため記しておくと、「さらに十日あまり」は「さらに十日余りして」(65頁)、「一月あまり前」
は「一ヶ月あまりになります」(66頁)という「現代語訳」なっておりました(^_^;)

以上、読んでて変だなぁと思った箇所が誤訳だったわけだけど、メチャ不思議なのは小生所蔵の本書は
「2000年7月5日 第16刷発行」なんだよねヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ これだけ売れてて、この誤訳に気付いた人が
いなかったとは考えにくく、気付いても岩波書店に指摘しなかったのかな(@_@;) もし指摘があれば、
岩波書店なら対応するかと(^_^;) 大昔に『広辞苑』の誤りを手紙で指摘したら、丁寧な御礼の葉書が
届いたことあるからね(⇒ https://yomunjanakatsuta-orz.blog.so-net.ne.jp/2015-07-29 の末尾の
「余談」と[追記160413]に書いた)(^_^;) 読んでて気付かぬサル以下もいたりして((;゚Д゚)ヒィィィ!

なお、今回は別ブログ「けふもよむべし あすもよむべし」の「180622読んだ本&(明日)買った本」
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22 )の「伏線」回収回でした(^_^;)
タグ:小説 中国
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